ランニングで膝が痛い⋯その理由は「使いすぎ」による筋肉アンバランスかも

ひざの痛みのイメージ

【この記事でわかること】

  • ランニングで膝だけが痛くなる本当の理由
  • 使いすぎている筋肉と使えていない筋肉のアンバランスが膝痛を招く仕組み
  • 腸脛靭帯炎・鵞足炎・膝蓋腱炎、それぞれの筋肉アンバランスとの関係
  • 休んでも膝痛が再発を繰り返す理由
  • 第3のアプローチ「コンディショニング」について

ランニングを続ける中で膝に痛みを感じたことはありませんか。
しばらく安静にして良くなったと思っても、また走り始めると同じ場所が痛くなる。そんな経験を繰り返している方は少なくありません。

実は、その痛みの本当の原因は「使いすぎ」ではなく、その先にある筋肉のアンバランスにあります

走りは全身運動です。地面を蹴った力が膝→股関節→骨盤→背骨→肩甲骨→肩・腕→首・頭へと伝わっていき、身体全部の筋肉を連動させて前へ進みます。
そして、長期間ランニングをつづけることで、筋肉のアンバランスが生まれ、それが歪みや故障へとつながるのです。

この記事では、特にランナーの悩みの中でも多い膝の痛みにフォーカスして、その原因と対策を解説します。

膝という関節の特殊性

膝の痛みを理解するには、まず膝という関節の構造を知っておく必要があります。

膝は、足首や股関節と比べると、骨の噛み合わせが非常に浅い関節です。骨格だけでは安定を保てず、周囲の筋肉・靭帯・軟骨が複雑に組み合わさることで、はじめて安定した動きが実現しています。

ランニング中は、1歩ごとに体重の5〜7倍の負荷が膝にかかると考えられています。これだけの衝撃を受け続けながらも膝を守るためには、周囲の筋肉がしっかり機能していることが不可欠です。

つまり、筋肉の状態が膝の健康に直結している関節、それが「膝」なのです。

膝関節は構造的に不安定

股関節は骨盤のくぼみに大腿骨頭がはまり込む「ボールとソケット」の構造で、もともと安定性が高い関節です。足首も、くるぶしの骨が両側からしっかりと固定しています。

股関節と骨盤の構造

一方、膝はどうかというと、大腿骨(太ももの骨)の下端と脛骨(すねの骨)の上端が接しているだけで、骨どうしの噛み合わせはほとんどありません。

膝関節の構造

この構造的な不安定さを補っているのが、前十字靭帯・後十字靭帯・内側側副靭帯・外側側副靭帯という4本の靭帯と、大腿四頭筋・ハムストリングス・腸脛靭帯などの筋肉・腱です。

これらが正常に機能しているときは問題ありませんが、筋肉のアンバランスが生じると、膝関節の安定性が損なわれ、特定の部位に負担が集中するようになります

「使いすぎ」は原因ではなく、結果

膝が痛くなったとき、「走りすぎたから」「練習量が多すぎるから」と言われることがあります。確かに、練習量が影響しているのは事実です。
しかし、同じ距離を走っても膝が痛くならない人もいます。その差はどこにあるのでしょうか。

「使いすぎ」は、あくまでも結果です。本当の原因は、その背後にある筋肉のアンバランスにあります。

使いすぎている筋肉と使えていない筋肉のアンバランス

筋肉は、互いに補い合いながら動いています。ある筋肉が機能しなくなると、別の筋肉がその役割を代わりに担います。これを「代償」と呼びます。

ランニングでよく起こるのは、次のようなアンバランスです。
例えば、膝が内側に向いている人は、股関節を内旋させる大腿筋膜張筋や中殿筋前部が使いすぎて硬くなり、中殿筋後部や大殿筋、内転筋群(大内転筋)が使えていないことが多いです。脚を閉じて立った時に膝がくっつかない人はその傾向があります。


また、膝が曲がりやすい人は、大腿四頭筋や腓腹筋を使いすぎており、ハムストリングスが使えていない傾向になります。床に骨盤を立てて脚を伸ばして座ったときに膝が浮く人はこの傾向にあります。

足首の硬さも膝の痛みにつながる

足首の可動域(特に前後への曲げ伸ばし)が狭くなっていると、着地した際に足首で衝撃を吸収することができません

本来であれば、着地の衝撃は足首→膝→股関節と順番に分散されながら上半身へと伝わっていきます。しかし足首が硬いと、この分散がうまくいかず、衝撃がそのまま膝に集中します。

また、足首の動きが制限されると、歩き方・走り方全体のパターンが変わります。膝が過剰に前に出たり、着地のタイミングがずれたりすることで、膝周囲の特定部位に反復的なストレスが加わり続けます。

足首のケアが膝痛の改善につながることがあるのは、こうした連動の仕組みが背景にあるからです。

ランナーに多い膝痛3パターンと筋肉アンバランス

ランナーに多い膝痛には、大きく3つのパターンがあります。それぞれの痛みの場所と、関係する筋肉のアンバランスを整理すると、次のようになります。

疾患名別称痛みの場所関係する筋肉アンバランス
腸脛靭帯炎ランナー膝膝の外側中殿筋・梨状筋(または深層外旋六筋)の機能低下→腸脛靭帯の過緊張
鵞足炎膝の内側ニーイン・トーアウト→膝内側への負荷集中
膝蓋腱炎ジャンパー膝膝の前面ハムストリングスの機能低下→大腿四頭筋の過活動

同じ「ランニングで膝が痛い」でも、痛みの場所によって関係する筋肉のアンバランスが異なります。それぞれのメカニズムを見ていきましょう。

膝外側の痛み(腸脛靭帯炎/ランナー膝)

腸脛靭帯炎は、ランナーに最も多い膝の故障のひとつです。

太ももの外側を走る腸脛靭帯は、骨盤から膝の外側(脛骨の外側上端)にかけてつながっています。膝の曲げ伸ばしのたびに、この腸脛靭帯が膝の外側にある骨の出っ張りを通過し、摩擦が生じます

通常、この摩擦は問題になりません。しかし中殿筋や梨状筋が弱くなり、着地のたびに膝が内側に入るようになると、腸脛靭帯への引っ張りストレスが増大します。腸脛靭帯自体は伸びる構造になっていないため、繰り返しの摩擦と緊張によって炎症が起きるのが腸脛靭帯炎です。

走り込むほどに痛みが強くなり、休むと落ち着くけれどまた走ると再発する、という特徴があります。

膝内側の痛み(鵞足炎)

膝の内側、脛骨の少し下あたりに痛みが出る場合は、鵞足炎が疑われます。

「鵞足(がそく)」とは、縫工筋・薄筋・半腱様筋という3つの筋肉の腱が集まって付着している部位のことです。ガチョウ(鵞鳥)の足に似た形をしていることから、こう呼ばれています。

ニーイン(膝が内側に崩れる動き)やトーアウト(つま先が外を向く動き)で走っていると、この鵞足部位に繰り返しのストレスがかかります。内側の筋肉群が過剰に引っ張られることで、付着部位に炎症が起きるのが鵞足炎です。

ランニングの後半や、長距離走の翌日に痛みが出やすい傾向があります。

膝前面の痛み(膝蓋腱炎)

膝のお皿(膝蓋骨)のすぐ下、膝前面の腱に痛みが出るのが膝蓋腱炎です。

このメカニズムには、股関節や膝が伸びずに曲がっていることが関係しています。

腸腰筋は、脚を前に振り出すときの主要な筋肉です。腸腰筋ばかりを使って後ろへ蹴る大殿筋が使えなくなると、膝も曲がりやすくなり大腿四頭筋(太ももの前側)が引き伸ばされながら力を発揮する形になります。

大腿四頭筋が酷使されると、その腱である膝蓋腱に繰り返しの引っ張りストレスがかかり、炎症や微細損傷が蓄積されていきます

「下り坂や階段で膝前面が痛い」という方は、この膝蓋腱炎のパターンに当てはまることがよくあります。

繰り返す膝痛の本当の理由は?

「走り始めたら膝が痛くなって、休んだら治る。でもまた走ると痛くなる」このループに入り込んでしまっている方は多くいます。

しばらく休んでも膝の痛みがなかなか消えない、あるいはいったん消えてもすぐに再発してしまう。
その理由は「使いすぎたから」でも「年を重ねたから」でもないかもしれません。
使い方のパターン、つまり筋肉のアンバランスが変わっていないからです。

安静にすることで炎症は治まり、痛みは引いていきます。
しかし、炎症が治まることと筋肉のアンバランスが改善することは、まったく別の問題です。

休んでいる間も、立ち方・歩き方・座り方などの日常の動作パターンは変わっていません。
筋肉の使い方のクセもそのままです。だから走り始めると、また同じメカニズムで同じ部位に負担がかかり、痛みが再発します

こうしたアンバランスは、長年の走り方のクセや日常の姿勢の積み重ねで形成されたものです。たとえば、長時間の座り仕事で股関節が常に曲がった状態にあると、大殿筋は働かなくなり、走るときにも同じパターンが現れます。

問題は意志や根性ではなく、自分の身体の使い方のパターンに気づく機会がないことです。

「鍛える」でも「休む」でもなく「整える」という選択肢

膝が痛くなったとき、多くの方は次のどちらかを選びます。

「筋トレで脚を強化する」か、「とにかく休む」か。

しかし、筋肉のアンバランスがある状態でただ鍛えると、使えている筋肉がさらに強くなるだけで、使えていない筋肉は変わりません。
アンバランスがかえって大きくなってしまうことがあります。
そして、ただ休むだけでは使い方の癖は変わらないため、再発のループに陥ってしまいます。

第3の選択肢が「整える(コンディショニング)」です。

コンディショニングでは、まず筋肉のアンバランスを明確にすることから始めます。
どの筋肉が使えていないのか。どの筋肉が代償で酷使されているのか。弾力を失っている筋肉はどこか。などを確認していきます。

その上で、使えていない筋肉を呼び覚まし、筋肉本来の弾力を取り戻すアプローチをとっていきます。「鍛える」前に「整える」。その順番が、膝の痛みを根本から変えていく鍵になります。

自分のアンバランスがどこにあるかは、専門的な視点で身体の使い方を確認してはじめてわかるものです。
ナチュラルマッスルでは、筋肉のアンバランスの確認、身体の使い方の癖を基に、筋肉を整え、その後、正しい身体の使い方をできるように整えていきます。スポーツ選手も行うような走る前の整え方もお伝えしています。
長く健康に走るために、整える習慣から見つけていきませんか。
ぜひ一度実感してみてください。